アイデアソンでは、参加者である大学生と社会人、そして京都の伝統工芸の工房が1つのチームになり、工房を見学したりインタビューと議論を繰り返したりしながら、パートナーとなった工房の工芸品や歴史、職人の人柄といった魅力を「見つけ」、そしてSNSと展示会でいかに「伝える」か、という課題に取り組みます。この試みを通じて伝統工芸品の良さを知ってもらい、新たなファンをひとりでも多く増やすこと。そして、その先にある課題の新発見につなげていきます。
初回となるキックオフは「知る」がテーマ。参加者がチームのこと、伝統工芸品のこと、工房の職人さんのことを知り、学びながら、イベントに共に取り組む工房を、参加者同士で話し合って決定します。さいしんこうげいは、大学生と社会人の参加者22名が4つのチームに分かれて、イベントに協力いただく工房とパートナーを組み、具体的な課題解決に挑戦します。そのため、最も重要なことの1つが工房とのパートナリング。キックオフのメインイベントとして工房交流会を実施し、4つの工房の職人さんから歴史や技術、想いを教えていただきました。職人さんにお持ちいただいた実際の工芸品の美しさや職人さんの興味深い話に、参加者のみなさんも終始前のめり。終了の合図にも気づかないほど熱心にヒアリングする様子が見られました。はじめて触れた伝統工芸の魅力にわくわくした面持ちが冷めやらぬままキックオフが終了し、4つのチームでのアイデアソンが無事にスタートしました。
『伝統工芸の魅力』とそれを『誰に』『どのように』伝えるのか、現段階での考えを共有し、さらにそれを「深める」ための中間発表を行いました。キックオフからの3週間のあいだにそれぞれの工房で作品から制作過程までを見学した各チーム。専用道具の種類の多さと複雑さへの驚きや細やかな作業や色彩の豊かさへの感動、そして職人さんたちの技術や想いへの尊敬にあふれる『伝統工芸の魅力』の「さいはっけん」「しんはっけん」に満ちた発表内容となりました。そして、どのチームもこれからの課題は『どのように』展示会で表現するか。そのヒントとなるよう、展示会場の設計や施工の経験豊かなデンキトンボ株式会社の林社長をお招きし、さまざまな事例をご紹介いただきました。また、マーケティングフレームワークを活用したプロモーションの考え方の説明も実施。その内容を踏まえたチームディスカッションは、いろいろな意見が飛び交うわいわいとした時間となりました。独自のロゴを作成したり美大生をターゲットにして発想をふくらませたり「推し」というトレンドに着目したりと、各チームの個性が光るアイデアがたくさん!最終発表がたのしみです。
最終発表では展示アイデアの1位を決める「アイデア賞」の選考を行いました。審査は参加者全員がチームに投票する「一般票」に加えて、京都文化博物館や京都産業大学などの審査員がアイデアや「発想の面白さを競う『独自性』、説得力のあるプランニングを競う『共感性』、SDGs観点での工夫を競う『環境配慮』、それらを総合的に判断して最も良いチームを選ぶ『総合性』、の4つの観点で投票する「審査員票」の合計で判断。 投票の結果、4チームともにかなりの接戦となりましたが、僅差でチームB「シン祭具Project」がアイデア賞に輝きました。
【再定義した魅力】
伝統×時代に合わせた新しい表現
【ターゲット】
京人形を知らない20~40代(Y世代)
【テーマ】
自分らしく生きる自分の人生を楽しむ/京人形で今の時代を感じてほしい
【アイデア】
多様性のセクシャリティのひとつトランスジェンダー(Transgender)を表現
【展示方法】
・男雛に長髪や十二単を合わせたり、雌雛に短髪や袴を合わせることで表現
・人形の背後にはモニターで背景を投影し、フォトスポットに
・京人形の種類や歴史、工程を説明するパネルを設置
・インスタグラムへの二次元コードを記載したポストカードを配布
【再定義した魅力】
①木のぬくもりを活かす技術 ②形ないものを形にできること
【ターゲット】
SNS×推し活文化のあるZ世代
【テーマ】
推しや大切なもの、想いを綴った物などを祀る、~おぼろげな気持ちを神祭具によって明確なものに!
【アイデア】
神聖かつ自由な発想につなげることができる展示
【展示方法】
・神聖さを表現した真っ白な空間に祭壇を設置し、ライトで照らす
・祭壇内には二次元コードを祀り、自由な使い方ができることを表現
・木くずを再利用し、木の香りを感じてもらう
・外側の壁面には、工房の技術を紹介するパネルを設置
【再定義した魅力】
細やかな工程(1色ごとに希望に合わせて調合する唯一無二の色など)
【ターゲット】
機会があれば着物を着てみたいと考えている人
【テーマ】
着物の繊細さや鮮やかな色を知ってもらう
【アイデア】
着物を取り入れた日常を想像できる機会の提供
【展示方法】
・複数のマネキンに着物を着せて並べる(着物へ注目できるよう頭なし)
【再定義した魅力】
豊富な技法と色=「自由さ」と「個性」が出せる
【ターゲット】
もともと刺繍に興味を持ちやすく、京刺繍を知らない「服飾学生」
【テーマ】
「刺繍オタクつむぐの部屋」※ペルソナを設定(刺繍好きの19歳糸井つむぐ)
【アイデア】
作業スペースをイメージした場所を作り、ストーリー仕立てで紹介
【展示方法】
・「すぎした」の小物や、学生が工房体験で作成した刺繍を設置し身近さを演出
・京縫の魅力や職人さんの人柄、技術を伝えるドキュメンタリー風動画を作成
・トルソーに、刺繍制作中の着物を展示
・写真やメモ、多彩な糸を設置し、技法や色彩の豊かさを伝える
・背面に身近な風景を投影し、日常の中で着物を着る様子を想像させる
・Instagramの着物の投稿を集めてスライドショー風に投影